信州自遊塾 第1回講座「信州の自然エネルギーを考える~水・森林・そしてあれこれ~」を、東日本大震災からちょうど半年にあたる9月11日(日)、松本市の松本大学で開きました。
今年3月11日に起きた東日本大震災、福島第一原子力発電所の事故のあと、多くの方が電力をはじめとするエネルギーのありようについて深い関心を寄せたことと思います。
水や森林など大自然の宝庫である信州。その信州で安全なエネルギーについて一緒に考えようというシンポジウムに県内外から100人余りが集まりました。
まず、コーディネーターを務める松本猛塾長が、東日本大震災が大きなきっかけになった信州自遊塾の設立趣旨を述べるとともに、被災地福島県での聞き取り調査の結果として、飯舘村では、原発事故当初の情報が不十分だったために子供たちが多量の放射線を浴びてしまい、避難後も外で遊べないでいるといった実情を報告し、「情報伝達の担い手や、原発を国策として推進してきた政府、関係機関、企業や大量消費社会を享受してきた自分たちの責任を含めて『人災』の側面から今回の災害をしっかり検証しよう」と提案しました。
続いてパネリスト3人がそれぞれの活動を踏まえて問題提起をしました。このうち、環境問題について啓発活動をしている「信州気候フォーラム」事務局長の平島安人さんは、「3・11があろうがなかろうが原発は真剣に考えなければならないテーマだった。今後は急激に進んでいる地球温暖化への対処を念頭に置きながら、太陽光や風力、水力など多様な自然エネルギーを活用して持続可能な社会をめざすべきだ」と述べました。
また、NPO法人「信州松本アルプスの風」の発起人として県内外で小規模な水力発電の実証試験や設置支援をしている月岡通孝さんは、「山々に囲まれた日本は世界でも利用可能な水力エネルギーに恵まれているが、小規模な水力発電の開発は進んでいない。より少ない力で実用的な発電を行える1000キロワット未満のマイクロ水力発電を積極的に導入していく必要がある」と指摘しました。
大規模リゾート開発やダム建設に反対する活動を進めつつ、カラマツなど針葉樹を燃料とするストーブの普及に取り組んでいる「環境会議・諏訪」の事務局長、清水馨さんは、水や二酸化炭素を循環させる役目を持ち「生命の源」ともいえる森が、高度成長期のエネルギー政策によって放置され、荒れ放題になっている現状にふれ、間伐など林業の復活が喫緊の課題だと訴えました。
続くパネルディスカッションでは、原子力や火力に変わる自然エネルギーの活用法について意見交換が行われ、「自然エネルギーは『再生可能エネルギー』とも言われるが、無尽蔵ではない。その点をわきまえて節度を持って使うことが大切だ」との指摘がありました。
また、太陽光については、「高木が茂る森林には乱反射などを使って地表まで光を届かせる自然の巧みがある。今、脚光を浴びている大規模な太陽光発電は地表をすっぽり覆ってしまうものであり、土地の利用法としても問題があるのではないか」といった意見も示されました。
このほか、人類のエネルギー消費の歴史も紹介され、過去400万年の人類のエネルギー総消費量の実に半分以上が20世紀のわずか100年の間に使われ、日本でも高度成長期以降、急激に増加したこと。また、地球温暖化の原因である二酸化炭素は、家庭から直接出るものは日本全体の14%でしかないが、家庭で消費するものを作ったり運んだりする過程で出るものを含めると48%に上ることなどが明らかにされました。
このあと、会場の参加者からの質問や意見をもとに議論が進められました。最も多かったのは水力発電に関連した質問で、「一世帯の消費電力をまかなえるだけの発電施設を作るための費用や手続き、環境面など配慮すべき点は」といった質問が寄せられました。これに対して小規模発電の普及に取り組んでいる月岡通孝さんは「家庭で使う30アンペア程度の電力をつくれる水量は各地にあり、県内でも辰野町などで実績がある。用水路などの日常的なメンテナンスを行うので環境面でも問題はない」と答えた上で、小規模水力発電の装置には既製品がなく、注文すれば発電機だけで45万円近くかかる。ほかに蓄電池なども必要になるため、その経費が普及のネックになっている」という見方を示しました。
また、カラマツを燃料とするストーブの効用について清水馨さんは、「デザイン優先のヨーロッパ等のストーブは1000度以上の高熱を発する針葉樹を燃やすのに適さないが、開発した薪ストーブは可能だ。役に立たないと間伐しても放置されていたカラマツなど針葉樹の有効利用につながり、林業の再生に直結する」と強調していました。
会場からは、「政治を変えることも大事だが、自分たちの暮らしを見つめ直し、自ら生き方を変えていくことも必要ではないか」という発言もあり、松本猛塾長が「エネルギー問題を考えるキーポイントは『地産地消』ではないか、信州に豊かにある水や森林や太陽光など自然の恵みをどう活用していくか、地に足をつけて考えていきましょう」と応じていました。
最後に、中野和朗名誉塾長(信州大学名誉教授・松本大学元学長)がマイクを持ち、「エネルギー問題は私たちの生活の最も基本的な問題であったにもかかわらず、自分たちで考えたり、問題解決をしようとしたりせずに、大企業などに『丸投げ』してきた。大震災にあった今こそ、主体的に自分たちの問題として考えていきたい。市民の草の根の活動を点から線、線から面へと広げ、自分たちの社会を理想の形につくりあげていきましょう」と呼びかけ、第一回の講座を締めくくりました。
講義のあとのアンケートで、参加したみなさんからは「自遊塾の発想・観点がいい。それぞれの分野で考え実践している人のお話が聞けてよかった」「論議された課題を今後どのように活かすのか。問題点の提議はされたので、続くことを期待する」といった感想や要望が寄せられました。また、当日、新たに47人に会員登録いただき、会員総数は108人となりました。
信州自遊塾の第2回講座は10月29日(土)、安曇野市豊科交流学習センター「きぼう」に信州自遊塾講師で女優の根岸季衣さんを迎えて開きます。「非戦を選ぶ女優根岸季衣と、3・11後の生き方を語ろう」をテーマに松本塾長と語るほか、会場の皆さんにも自由に意見交換を行っていただきます。皆さまのお越しをお待ちしています。
※15分ごとに分割しています。
※1本に収録したDVDを、ご希望の会員には実費(DVD代・コピーする手間賃・送料)で販売いたします。ご入り用の方はお問い合わせ下さい。
1/11(第1部 パネリスト3人による問題提起) |
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5/11(第1部終了~第2部パネルディスカッション) |
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7/11 |
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8/11(第2部終了~休憩~第3部全体ディスカッション) |
9/11 |
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11/11(終了) |