【2014年10月18日(土) 10:00~15:00 松本市中山 円城寺】
寺子屋講座の3回目は、中山にある牛伏寺が兼務する「円城寺」をお借りしての自然体験。好天に恵まれ、講師・スタッフ含め23人が集まりました。
秋晴れの中、まずは昼食の鍋のきのこ集めに中山の山に入りました。山ときのこの先生(小山さん・仙石さん・中野名誉塾長)三名が同行とあって意気揚々と出発したのですが、今年はきのこ狩りには時期が遅いらしく残念ながら収穫は数本程度でした。それでも秋の暖かい日差しの中で、野生シカの食害などの問題も含めた山の生態系の話や植物のことなどを教わり、紅葉も楽しみながら気持ちよく山歩きができました。
楽しみにしていたきのこ鍋は、参加者や檀家さんからの差し入れのおかげで、たっぷりと山のきのこの入った汁になりました。その上、そば打ちの達人の中野名誉塾長からの手打ちそばやそば粉を使ったクレープやチジミなどのお料理、参加者の皆さんが持ち寄った漬物や果物で、秋の味覚をたらふく堪能。わいわいと参加者同士の話も弾んで楽しい昼食会となりました。
午後は、長野県林務部の職員として、牛伏寺のブナ林を含めた信州の森林の研究を続けてこられた小山泰弘さんに「中山の森から見つめる信州の自然」をテーマに、きのこの種類やマツタケのこと、樹木の寿命、ブナの木のことなど、分かりやすくお話していただきました。
ブナの木といえば世界遺産の白神山地で注目されてすごい木というイメージがあるが、実はあちこちにあり松本では牛伏寺にある。氷河期の終わりころから海のほうから移動してきた。植物は種を落としたときだけに動くチャンスがある。ブナは母親の遺伝子だけを受け継いで(母―種・父―花粉)葉緑体を作るので、DNAでルートを探ることが出来る。牛伏寺のブナは伊豆半島から富士山、諏訪を経由してやってきた。白神山地のブナは愛知から木曽、安房峠を通って北上している。他にも尾瀬から浅間山に来ている種類もある。それぞれ顔が違い性格が違うのでおもしろい。
意外にも日本の林業の売り上げの70~80%はきのこの生産。林業の稼ぎ頭である。日本のきのこの種類は4~5000種あり、食べられるのが約100種類、毒キノコが30種類程度で、それ以外は分かっていない。意外ときのこは研究が遅れている分野。
植物は自分が好きな場所ではよく育つ。逆に好きな場所がわかるときのこ(まつたけ)の場所もわかる。赤松林=まつたけと思いがちだが、まつたけはきのこの中でも深窓の令嬢。デリケートできれい好きで出る場所が限られている。落葉・雑草がなく、ほかの菌がいない場所で、樹齢20年くらいの赤松の木と結婚して生涯その根の先を棲家にする。まつたけの研究者は全国にいるが未だ栽培は実現できていない。逆に高価だから価値があるという考え方もある。
天然記念物といわれる樹のおおよそ半分がその木の寿命。松で2~300年・杉で500年位。
どんな木でも姿を見れば年代がわかる。若木のころは天に向かって鋭く伸び、成木は上が丸くなり、やがて横枝が茂ってくる。老木になると上部がなくなり、そして倒木。木の年齢がわかると、森の昔と未来がわかる。木は動かず静かにそこで生きている。そんな見方でも森を楽しんでほしい。
小山さんが午前中の山の様子や出来事などの例を挙げながら具体的に話してくださったので、満腹の午後のひと時にもかかわらずみなさん熱心に耳を傾けていました。実体験の後に解説を聞くことで森や自然について改めて考え、知識以上の理解につながる時間になりました。陽が西に傾きかけたころ、みなさん笑顔で山寺を後にしました。