□講師 長谷川尭氏(はせがわたかし)
長谷川先生には、実際にガーデンシティを基に計画されたイギリスの街並みや家屋・田園風景などをスライドを使ってお話ししていただきました。
ガーデンシティ論とは1898年にエベネーザ・ハワードが提唱した新しい都市形態の概念。都市を中心にその周辺に畑や果樹園を放射状に取り巻き他の都市と結ぶ、という広がりを持った考え方である。1単位のガーデンシティは、住居・労働・生産消費が完結できる規模(職住近接型)を有し、生活の場である街からわずかな距離で新鮮な空気と広々とした田園地帯に出会えることができる田園都市の構想。都市計画を考える上でこのような視点で秩序を持たせる考え方は、より人間らしく暮らすことを求める現代において再認識する必要があるのではないか。
■新たにパネラーの山田さん・鷲さん・松本塾長が加わり、ガーデンシティ論という視点から松本地方の特性や文化、今後の課題など質疑を交えながらお話していただきました。
∗ 松本・塩尻・安曇野は畑や水田のような田園地帯を介してのつながりと広がりで構成されている。都市計画で市街化区域と市街化調整区域とを分け、無秩序な宅地化を制限しているのはガーデンシティの考え方が根底にあるのではないか。一方、商業施設が無秩序に乱立している国道沿線の現状は残念、方向性のある計画が必要ではないか。
∗ 首都東京との距離感。特急で約3時間かかるこの地は、郷土の文化が伝承され地方色「信州らしさ」が残るよい場所と言える。特急や新幹線で1時間半程度になると通勤という選択肢が加わり、ベットタウン化して地方色が失われやすい傾向がある。
∗ 今後、高齢化社会を経て日本の人口は2100年には江戸時代程度まで減少すると見込まれている。山村部の過疎化と限界集落の問題は、今の集落をコンパクトに縮小しながら、集落間のつながりを維持していくように今から計画的に進めていくことが、行政やサービスにおいても重要と考える。
∗ カタクラモールの跡地にイオンタウンの建設が計画されている。大型ショッピングセンターは、巨大企業からの供給を消費する一方向だけの構図になってしまう。地域で作ったものを地域で販売し、消費することで地域に豊かさを還元することができる。「地産地消」「6次産業化」の循環型の流通を進めていくことが地方の経済にとって重要である。
ガーデンシティという考え方を踏まえたうえで、都市計画・大都市との関わり・山村地域など焦点を拡縮しながら我々の住んでいる中信地方を見つめ直す機会となりました。
改めて恵まれた環境で暮らしていることを実感しつつ、今後の課題にも目を向けることができました。
講座内容がやや専門的だったため、参加者の満足度が分かれる結果となってしまったことは反省点として今後に生かしていきたいと思います。