第11回講座は「これからどうなる?わたしたちの暮らし・おかね・食べ物」と題して、2013年5月18日13:30~16:30、松本勤労者福祉センター講堂にて開催されました。
今回の講座では、原発・増税・TPP・憲法改正の問題が取り上げられました。どれをとっても日本の将来を左右する大きな問題でありながら十分な情報が私たちに知らされないまま進められてしまっている危機感があります。また先の衆院選で自民・公明党と合わせて2/3の議席を獲得しました。7月の参院選で同じような結果になった場合、十分な議論が行われないまま一方的に突っ走ってしまいかねない危うさがあります。本講座では、安部芳裕さんに普段の報道などとは別の角度から話していただくことで、私たちが身近な問題として関心を持ち、自ら考え判断していく材料になればという想いで企画致しました。
安部芳裕
プロフィール:作家・ソーシャルアクティビスト・サステナブル経済研究所所長・プロジェクト99%代表
著書:「誰でもわかる地域通貨入門」ほか多数
未来の種まき実行委員会代表 阪本瑞恵
「これから私たちの暮らしや食べ物はどうなっていくんだろう?」という想いから、約30人ほどのメンバーが集まり、今回の開催に至りました。スタッフは子育て中のお母さんやお父さんが多く、「子供たちに明るい未来を残したい。そして自分も、その未来をつくっていく一員でありたい」との想いで準備をすすめてまいりました。これからどんな未来を描いていくのか、みなさんと共に考える機会になればと願っております。
プロジェクト99は、1%の既得権益を持つ金持ちのための政治から99%の大多数の人の政治へと変えていこうと活動している団体です。原発・増税・TPP・憲法改正は日本を崩壊させかねない大きな問題。スポンサーのいるマスメディアや政府からの情報は本当に正しいのか? 私からの情報も加えて何が問題なのか知ってもらい判断して欲しい。
【原発のこと】
・政府は「3・11の事故は想定外だった」と言うが、第1次安部内閣時に共産党が危険性を示し、対策を求めていたのも拘われず安全性ばかりを強調し何の対策もしなかった。
・当時の野田総理は「冷温停止状態になり事故は収束」と終息宣言をしたが、現在も東電発表で毎時100万ベクレルの放射性物質の放出が続き、人類史上経験のないメルトダウンの状態のまま収束方法が分からない状態である。
・電力不足だから再稼動と言うが、電気が足りていることは実証済み。原発を止めることで問題になるのは電力会社の会計。原子力から利益を受けている会社やメーカー側の主張。その利益から多くの政治家が献金を受けている。
3・11の事故は「津波のせいで壊れた」と政府は言うが、津波の前に既に壊れていた証拠がある。日本は地震大国であり、今は活動期に入っている。30年以内に東海・東南海・南海では高い確率で地震が起きると予測されているが、日本にある原発で巨大地震に耐えられるものはひとつもない。福島の事故では偏西風で放射性物質の70%が太平洋に流れた、同様の事故が西で起きれば日本全土が汚染され誰も住めなくなってしまう。現政権は、再稼動・新設をすすめようとし、外国にまで売込みしている。
・ウクライナでは5ミリシーベルト以上の場所は強制移住地域・非難の権利が与えられる地域にあたる。福島や周辺には5ミリシーベルト以上の場所が複数あるが同様の対策はとられていない。東京でもウクライナでは移住したほうがいい地域にあたる場所がある。
・福島県健康管理調査の結果、6~15歳の女子の半数以上に甲状腺異常が見つかった。チェルノブイリ事故後の調査よりも福島のほうが影響が強く出ている結果にも拘わらず、この異常と原発事故は関係がないと県は今後2年間追加調査は行わない決定をした。
・食べ物の基準、ウクライナは10ベクレル・日本は100ベクレル
【消費税増税のこと】
財政赤字で社会保障を賄うには増税が必要という論調があるが、デフレ状況時には可処分所得(自由に使えるお金)が減るためかえって税収が下がる。
増税 →消費減 →生産減 →労働者の所得減
消費税導入前までは一般会計の税収は右肩上がりだった。消費税は消費に罰金を課しているようなもの、3から5%と増えるにつれ税収は減。今後8から10%と増税するにつれさらに税収は減り財政赤字は拡大し社会保障費にも使えなくなっていくだろう。
経団連は消費税を上げて、法人税を下げるように要求している。1988年には40%だった法人税は2010年には30%に下がり、高額所得者の所得税や相続税の税率などを下げ、消費税の税収の裏でほぼ同額の法人税が減税されている。しかも法人税は赤字なら払わないで済むが消費税は赤字でも払わなければならない。低所得者や中小企業へのしわ寄せが大きい。
金融緩和・財政出動だけでは金持ち優遇、累進課税を強化する必要がある。生活保護費・地方公務員の給料減額、解雇の自由、正規雇用の減などの政策は更なる格差の拡大を生むことになる。デフレ脱却しても賃金が上がらなければ物価と税のみが上がる悪いインフレを招く。そして2015年に向けて社会保障費や税金を上げる増税スケジュールの試算によると、ほぼ全ての世帯で約1か月分の収入と同額の負担が増えることになる。可処分所得が増えるような政策を採らなければ税収は増えない。
グローバル企業が各国の交渉官に働きかけて利益の出やすいルールにしていると言われている。民主主義との乖離・企業統治の危険性。
●日本では農業VS工業のように言われているが、全体で24の作業部会がある。その中の投資と金融がアメリカの狙い。日本の企業・土地・農地・水源などお金があれば何でも買われてしまう危険性。
●非関税障壁の具体例
牛肉・郵政・自動車ではアメリカの要求の多くを日本は既に呑んでいる。他国もアメリカのルールに変えていこうとしている。
世界銀行国際投資紛争解決センターにて審議するが、審議内容の非公開・上訴不可・判断基準は「条約に違反していないかどうか」の1点のみ。国家主権より企業の利益が優先されてしまう危険性。
アメリカの90日ルールによって7月の2日間と9月の2回のみ交渉参加できる見込み、10月のAPECで基本合意に至る予定。既に合意した条文は原則として再交渉は要求できないルールがあり、日本の要求で交渉できる余地はほとんどない。
農業は食料だけの問題ではない、国家安全保障の一番大事なところを手放そうとしている危険性。
【憲法改正のこと】
憲法とは国家権力が守るべきことや歯止めを記したもの VS 法律とは国民が守るべきことを記したもの(相反する決め事)
憲法が生まれた由来は、人間は生まれながらに自由・平等で幸福を追求する権利をもつという「天賦人権説」による。多数派の意見であっても平和や人権など奪えない価値を守る意味合いもある。
自民党は憲法改正草案を発表しているのでぜひネットで読んでほしい。
99条 憲法は天皇及び国家が守らなければならない→全ての国民が守らなければならないに変更。(1条で天皇を国家元首にし、憲法を守らせる義務を削除している。戦前回帰か?)憲法は本来国民が国家に守らせるもの。
9条 集団的自衛権の行使 → アメリカのイラク戦争のような戦争に加担する危険性。
国民に国防の義務が課される可能性。
13条(基本的人権の尊重) 「公共の福祉に反しない限り」が「公益及び公の秩序に反しない限り」となり、「何が公益及び公の秩序か」政府が決めやすくなる。
36条(公務員による拷問及び残虐な刑罰の禁止) 「絶対に」をわざわざ削除。
96条 改憲の発議を過半数で可能に → 過半数を持つ政権与党が簡単に発議できる。
そもそも違憲状態で選ばれた今の衆議院議員が改憲の発議をする正当性はないのでは?
【わたしたちにできること】
前回の衆院選では、原発・増税・TPP賛成の自民公明で2/3の議席を獲得した。これはほぼなんでも決められる状態であるということ。こうなった原因は59.32%という戦後最低の投票率の低さにある。一見圧勝に見えるが、民主党が政権交代したあの選挙よりも自民党は得票を減らしている。投票率を上げることで一方的な圧勝を防ぐことができる。政治に関心を持たないということは「どうぞ好きにやってください」と白紙委任状を渡しているのと同じこと、みんなが社会を良くしようと動き出せばその結果、社会は良い方向へ変っていくと思う。今日話した内容は「Project99%」のサイトの「タウンミーティング資料」で見られます。情報が正しいかどうかは皆さんで確認・判断して行動してください。
Q. 東芝のような大企業のビジネスの売り込みを政府が行うのは、日本版「産軍複合体」と言えるのでは?A.その通り「産軍複合体」と言えるだろう。アメリカは軍事産業のために戦争を始めて武器を売って儲けたい。ターゲットは中東と東アジア、時代は戦争に向かっている。
Q. 自民改憲案では、緊急事態に国が戒厳令を敷けるようになるのでは?
A. 「戒厳令」は内閣が国を自由にコントロールできる状態。改憲でなく法律を変えるとか、TPPでも事前交渉を口実に国内法だけで解決できるように事を進めてしまっている。
Q. 新エネルギー源として、アメリカのシェールガスや、メタンハイトレードの可能性は?
A. シェールガスはコスト高とすごい環境汚染、シェールガスもメタンハイトレードも長続きしないだろう。日本には地熱・海洋(波)・石炭から出るガスが残っている、そこに手をつけたほうが良いと私は思う。
Q. 福岡の玄界原発が日本一危険と言われた理由は?
A. 古いから。水をかけると壊れてしまう、80℃以上のお湯でないと割れてしまうと言われている。事故があったときにお湯で冷却するなどナンセンスではないか。
Q. 我々はどうすればいいか? 政治家を選ぶ基準・情報の見方を教えてください。
A. 国民が見る目を付けることが大事。多数の新聞を読み比べたり、報道などいろんな情報と接するように意識する。私のツイッターでも情報発信している。信念を貫ける政治家を選ぶためにも候補者をよく知ることも大事。
講演を終えて、これからどうしたらいいのか…と不安になった方。講演内容すべてには賛同できないと感じた方。いろんな人がいていろんな感じ方があったと思う。人はそれぞれ違う考え方を持っている、違っていていいんだと私は思う。けれど私たちは、「これだけは間違ってはいけない」という基準を持たなければならない。それは戦争を起こしてしまうような可能性。福島のあの原発事故を繰り返してしまうような可能性。ここだけは間違ってはいけない判断だと私は思っている。日本が抱えている問題はたくさんあり、今度の参院選は分かれ目になるかもしれない大事な選挙。しかし選挙が終われば終わりではない。私たち一人一人が関心を持ち続けることが大事なのではないか。
講堂の広い会場がほぼ埋まり200人以上の方が来場しました。予想以上に若いお父さん・お母さんが多かったことで、託児の定員20人を超えた子供の姿が目立ち、幅広い世代での関心の高さが伺えました。高い回収率のアンケートでは熱心に書き込まれたものが多く、時間制限により受けきれない質問の多さにも、直面している問題への不安や疑問が大きいと感じました。
また今回、「未来の種まき実行委員会」http://mirainotanemaki.seesaa.net/という若い世代の有志たちと共同開催することができ、彼らの熱意と行動力に刺激を受け、良き出会いに感謝しています。