【2024年11月30(土) 第1部:湯川トラウトパーク 第2部・第3部:佐久市浅間会館 参加者18名】
「私たちが普段何気なくスーパーマーケットで購入している安価で便利な食肉。食肉生産の現場では、家畜を一日でも早く成長させ出荷することが最優先され、家畜の生育環境への配慮は二の次となります。そしてそれがどんなに劣悪であっても、一般消費者の目に触れることはありません。また、私たちは動物の命をいただいているのに、殺生の罪悪感も無く食べることが出来てしまっています。
このような現状に疑問を持ち、「食」に真面目に向き合おうとする人たちがいます。
今回のエクスカーションでは、そんな方々の思いに耳を傾けたいと考え企画しました。
今年の狩猟が解禁となった11月末に、当塾事務局メンバーでもある漫画家のさだめさんのコーディネートの下、佐久地域での開催となりました。
軽井沢を拠点に活動されているハンターの和部洋史さんに実際の狩猟現場で解説いただきました。和部さんは元々横浜生まれ横浜育ちのサラリーマンだったのですが、転勤を機に軽井沢への移住を決意したそうです。中でも野生鳥獣による農業被害を見聞きし、野生動物と向き合う狩猟に興味を持ったとのこと。
和部さんからは、猟銃の仕組みや狩猟時にハンターは何を考えて野山を歩いているのか等、狩猟者ならではの生の話を聞くことが出来ました。
狩猟の心構え(動物に襲われることよりも人間から誤射されることの方が怖い。山へは目立つ服装で入ること)、狩猟に適した天候(風がある日や小雨の日、雨上がりは人間の足音が紛れるので、動物に気づかれにくい)、鹿の足跡の見つけ方や新しさの判断方法、鹿が好む場所、銃弾の材質(比重があり柔らかい鉛が使いやすいが、野生動物が食べると有害。北海道では禁止されている)、長野県の狩猟可能区域や区分、期間 等を教えてもらいました。
会場の湯川トラウトパークは野鳥が生息地になっており、空気銃を持つさだめさんと、散弾銃を持つ和部さんで挟み撃ちの狩猟を試みてもらいました(マガモには逃げられてしまいましたが)。
浅間会館食育室に移動し、ジビエランチをいただきました。さだめさんが前週に霧ケ峰で獲ってきた来た鹿肉をメインに使った、サラダ、ロースト、キッシュ、スープ、鹿シチュー等とても豪華なランチでした。さだめさんのお友達のシェフがとても上手に料理してくれ、覚悟していたジビエ特有の臭みや硬さは全く感じませんでした。ジビエ肉以外でも無農薬の野菜や、あいがも米、大豆ミート等のこだわりの食材がふんだんに提供され参加者は大満足でした。
さだめさんから「長野県の狩猟と有害鳥獣の現状」について解説を受けました。
さだめさんは「現在の食肉が作られる過程が消費者からは見えないこと」や「家畜の命に敬意が払われていない生産システム」に違和感を持ち、動物への礼儀の取り方として狩猟に興味を持ったとのこと。
長野県で、狩猟で生計を立てられている猟師はいるか?
獲ったジビエ肉を販売して生活出来ている人はいないと思う。有害鳥獣駆除に関わって補助金を得ることは出来るがそれだけでは生活は難しい。
狩猟では犬は使わないのか?
猟犬を使った方が獲物を追い立てたり、発砲後に回収するには都合が良いことは確かだが、そのために犬を飼ったりトレーニングすることは費用や手間の面で負担が大きい。犬が行方不明になるリスクもある。
狩猟した獲物は肉として食べなければもったいないし、命を粗末にすることになる。
もっと食肉として消費するシステムを作れないか?
同感であり、害獣駆除で終わらせてはいけないと思う。しかしながら狩猟を害獣駆除や撃つことだけを目的としているハンターが多く、食材にすることを考えている人は少ないのが現状。
食肉にするには指定された加工場で適切に処理しないと売り物にならない。またジビエ肉は高価になってしまうこともネック。消費者がジビエに関心を持ち、ジビエ肉を食べることが普及・流通につながると思う。
「初めて狩猟の現場を見ることが出来てとても良かった。狩猟への興味が一段と深まった」「ジビエ肉は料理法次第でこれほど美味しく食べられることに驚いた」「野生鳥獣と向き合う必要性と難しさを知ることが出来た」等の意見が聞かれました。さだめさん、有意義なエクスカーションとなりました。有難うございました。(事務局 富取)