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〈レポート〉「なおとみ資源の森」見学会

2018.06.17 | カテゴリー:その他のお知らせ

【2018年5月31日(木)14:00~16:00 長野市大豆島 直富商事株式会社】

今年度4回シリーズで開催している「ドイツから学ぼう」講座を共催している長野県日独協会からの紹介で、長野市大豆島の富商事株式会社本社・工場と、資料館「なおとみ資源の森」の見学会を共催で行いました。日独協会から15人、信州自遊塾から5人、計20人が参加しました。

木下相談役からのあいさつの後、以下の順で見学がすすみました。

会社紹介

業務内容についてビデオでの紹介がありました。

  • 古紙、雑誌から廃プラ、ペットボトルなどの家庭ごみや金属スクラップや産業廃棄物の処理
  • 古着を回収して、衣類として再使用できるものはアジア、アフリカで再利用
  • 社会貢献活動として、工場見学の受入、地域清掃、また中国石家荘市への小学校寄贈、カンボジアでの井戸寄贈などの紹介

工場見学

マスク、ヘルメットと見学者用上着を着用して、いよいよメインの工場見学です。参加者はそれぞれ熱心に聞き、質問をしたり、写真を撮っていました。昨年度の見学者は1500名になるそうです。
以下、簡単ですが各工場の様子を報告します。

まず、段ボール、新聞紙、雑誌などの分別、圧縮工場で、ここでの作業後は再生工場へ運ばれます。床には紙くずなどが散らばっていると想像しますが、綺麗に清掃されており、担当の方も「見学される方は皆さん『見学前に掃除したのでは?』と聞かれますが、そういうことはなく何時でもこの様に綺麗にしています。」との事でした。

そして工場の一角には機密文書の保管室があり、ここへ入室できる人は限られており、室内もカメラで常時監視するなどISO27001に基づいた管理を行っています。この部屋は機密上見学は出来ませんでした。

ラッセル車

隣の敷地では、成田エクスプレスの先頭部分とラッセル車の鉄道車両の展示があり、その前で記念写真を撮りました。ラッセル車を間近で見るのは初めてでしたが、やはり巨大なものでした。

次は、非鉄原料工場で、ここでは被覆電線から銅の回収を行っており、細かい裁断処理で銅は米粒ほどの細かい粒(銅ナゲット)となります。この工程は皆さん興味津々でした。

その後はペットボトルや発泡スチロールなどのプラスチック類の工場で、ラベルの付いていないペットボトルは細かく破砕され、再生工場へ送られます。廃棄物として回収されるペットボトルはラベルが殆ど剥がされており「日本人のまじめさ」を感じているとの事でした。この話の中ではリサイクル処理には分別が重要であることを力説しておられました。発泡スチロールはそのままではかさばるため溶融固化され、再生工場へ送られます。

最後の鉄原料工場では、5000個以上の空き缶が50~60cmの立方体に圧縮されていました。また大型の金属スクラップは「ギロチン」と呼ばれる切断機で細かくされ、大型磁石で選別された鉄は再生工場の電気炉で溶融され新たな鉄製品に生まれ変わります。なおこの工場では粉塵が発生するため、ミスト噴霧を行っていました。

リサイクル資料館「なおとみ資源の森」見学

3階建てのリサイクルに関する資料館で、日常生活から出る殆どの廃棄物についてのそのリサイクルの方法やどの様に再利用されるかの説明が現物の展示により判りやすく説明されています。そのため子供から大人までリサイクルについて学ぶ事ができます。1階は、日常生活で生じる廃棄物の説明、2階は色々な廃棄物のリサイクル方法の紹介で3階は金属のリサイクルについての展示・説明となっています。

リサイクルに関心のある方はこの資料館だけでも見学すればと思います。

直富商事株式会社 会社概要

本社 長野市大豆島、他に工場、事業所が長野市に5ヵ所
HP http://www.naotomi.co.jp
創業 昭和23年
従業員 529名
売上高 95億2900万円
事業内容 廃棄物及び資源のリサイクル・処理、サポート
取得規格 ISO9001、ISO27001

 

感想

  1. リサイクル工場と言えば一般的に汚いイメージですが、どの工場も廃棄物の処理工場とは思えないほど清掃が行き届き綺麗さでした。この事は多くの参加者が感じていたようです。
  2. 年1回、地域の方々と懇談会を行っているとの事でした。そこでは業務の説明や住民からの要望などを聴き、住民の理解を得られるように対応しているとの事です。その努力のかいもあり、以前トラブル時に1人の住民からクレームがありましたが、他の多くの住民が「直富さんはしっかりやっている。」と弁護してくれたそうです。
    廃棄物処理工場は地域からすると敬遠される施設なだけに、地域住民の理解を得るために努力し実施している事は、他の工場でも見習うべき点だと感じました。

《記録 会員 森村 昇さん》

 

見学会後、行われた座談会のまとめ(日独協会 矢﨑 陽一さん)

全体的印象(全員が等しく感じた印象)

  • 工場がきれいで整然としていた。
  • 従業員が素晴らしい。仕事ぶりばかりでなく、見学者への挨拶も。
  • 社員教育が充実していることが分かった(現場で資格取得者の名板を見て)

個別印象

  • 商品を購入して自宅に持ち帰った瞬間からごみが発生する。製造時に分解しやすいような構造にしてもらえばありがたい(メーカーへの要望)。
  • ペットボトルのラベルも印刷ではなく、剥がしやすい紙(あるいは薄いプラスチック)にしてもらえば助かる。
  • 安曇野市ではワインボトルのコルクキャップ以外にもメタル類も完全に取るよう指示しているがこれが大変。
  • 中国から大量の廃棄物が東南アジアに流れていると以前報道されていたが、日本の廃棄物処理技術で、国内で発生する廃棄物は国内で処理することが必要と感じた。
  • 「分ければ資源、混ぜればごみ」
    循環経済活動では 物を作る←それには原料が必要←資源は有限 まさに廃棄物が大切な資源となる時代が来た。

  • 若槻団地に住んでいる。団地はエコ大賞を受賞したが、団地では定期循環回収以外、ごみの常時持ち込みが出来るように、大きなコンテナーハウスを用意している。
  • 私も若槻団地に住んでいて、50周年を迎えた集会所が老朽化して改装が必要になった。その費用は直富さんからいただいた回収ごみの販売費用で賄えた。ありがとうございました(ただ分別については厳しく注文されているが‐冗談を込めて-)。
  • 子供たちが東京に住んでいるが、長野市との違いで、新聞と雑誌を一緒に束ねてよいか家族で話題になった。→直富さんの回答「新聞は新聞だけ、新聞、雑誌混合OKは、地域によって異なる」。
  • 農業資材のリサイクルは初めて見た。長野県では重要な分野。
  • 銅線類が被覆を除去して粉砕して、出てきたのが美しい銅やアルミの粒になって商品になる様子が印象的だった。
  • 奈良の生駒から長野に移住したが、自然もきれいだし、廃棄物処理が徹底されていて街も美しい。
  • 電線ケーブル類のリサイクルに感銘した。
  • 市民がリサイクルをもっと徹底して直富さんの負担を軽くすべきだ。

鉄道遺産展示場と「なおとみ資源の森」 見学

以下は「鐵の木下」の木下相談役に対しては釈迦に説法となります。

  • 鉄道レールは官営八幡製鐵所創業の明治時代(1901年)からトレーサビリティで品質管理されている。
    レールのウエブ(腹と俗称)には圧延の最終ロールで会社マーク、製造年月などが打刻され、これをもとにそのレールの成分分析、強度データがトレース出来ます。これはきわめて画期的なことで、レールの品質管理が如何に安全上重要かを表わしています。直富さんには貴重なレール実物サンプル(約5m, 300 kg/本)が集められていますが、これらの中の主なものを展示されてはどうでしょうか? (ご要望なら新日鐵OBのレール専門家にもdisplayの相談ができます)

  • 錬鉄
    一般の方は実物車両に興味が有りますが、鉄鋼の専門家には英国製の錬鐵(wrought iron)の橋梁が宝に見えます。あの銘板は大変貴重だと思います。錬鉄は産業革命直後のわずかな期間に製造されたもので、製造時の作業の写真は勿論、絵はありません。工学部の学生も、製鐵会社の社員もほとんど知らないと思います。真っ赤に溶解した鉄を作業者が鉄の棒でかき混ぜ、炭素、不純物の除去を行ったものです。丁度舟の櫓(paddle)でかき回すような作業からパドル法と呼ばれています。直富さん展示の橋は蒸気動力で作ったと思いますが、日本に鉄鋼技術が入るずっと前のことで、したがって日本人にはまったく馴染みのない珍しいものです。錬鉄はエッフェル塔に使われています。さら錬鉄の前は、鋼ではなく鉄の時代で世界最古の鉄製橋梁が英国に残され、Iron Bridgeとしてユネスコ世界遺産になっています。今でも現役で優美な姿に感動します。このような歴史的資産が英国、ヨーロッパでは大切に保存されていますが、御社でも保存がなされているのに敬服いたします。
    なお日本の鐵ですが、世界に最も誇れるのは「たたら法」で古代から伝わる「玉鋼」で砂鉄から作られます。有名な産地は出雲の国です。また玉鋼から作られる日本刀は世界の愛好家の垂涎の的になっていることはご案内の通りです。たたら法は東京工業大学 名誉教授 永田和弘 先生が今でも研究されています。

    まとめ

    リサイクルの作業を見学し同時に併設の資料館で全貌を学べる場は世界でも他には見られない。今後も多くの人々が訪問することを期待する。


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