【2018年4月8日(日) 松本市中央公民館 Mウィング】
2018年の講座のメインテーマを「ドイツから学ぼう」とし、長野県日独協会様と共催で、年間通して4回のシリーズで講座を開いています。その第1回を4月8日に行いました。この日のテーマは「ドイツの暮らしと日本のくらし」。長野市や、遠方からの参加者も多く、定員を超える110名の皆さまにご参加いただきました。
講座の内容は新聞記事で紹介されるなど、メディアにも大きく取り上げられました。
第1部では豊橋技術大学名誉教授の山本淳さんに「ドイツで学び、生活して」と題してお話しいただきました。
山本さんは1968年、19歳の時から1981年までドイツを中心に欧州に滞在。その間ミュンヘン、西ベルリン、ロンドン、チューリヒの大学で哲学、民俗学、美学を学ばれました。中でも8年間のドイツでの生活から山本さんが感じてきた”ドイツ的なるもの”を、キーワードを挙げて説明頂きました。
①音楽の浸透・・・ドイツでは教養的趣味が中産家庭に浸透しており、特に音楽は国民生活に浸み込んでいる。家族で室内楽合奏したり、シェアハウスで音楽を演奏することが日常生活に普通にある。
②旅行好き・・・”どこか遠くへ行きたい(Fernweh)”がドイツ人のDNAに組み込まれている。分厚い旅行書を片手に海外旅行を始めたのはドイツ人。”旅慣れた、世界の事情に通じた(bereist)”人に対する尊敬の念がある。
③討論・議論好き・・・討論議論が学びの一つの形態として定着。大学博士号を取得するためには公開討論を4時間行わねばならない。シュタイナーなどの教育制度には街のおばさんでも一家言持っていた。親子間での議論・話し合いはドイツでは普通で、これは教育が影響していると感じる。ドイツに慣れた後、日本に帰国すると周囲からは生意気と思われ、それが逆カルチャーショックだった。
また、戦後のドイツ人にとって、大戦中のNS(Nationalsozialisms、いわゆるナチス)政権の存在をどう理解整理し、今後に生かしていくのかは大きなテーマ。NS体験に正面から向き合い、失敗から学び取ろうとしてきたのはむしろ戦後世代。NSには良い点もあったなどと語る年配者もおり、これが戦中世代との世代間対立、確執を露出させた。
いずれにせよ、過去の汚点を注視するドイツ人の姿勢が市民の政治意識を高め、政治を強くした。
第2部は「何がちがうの?日本とドイツ・総論」と題してトークセッションが行われました。パネリストは第1部講師の山本さんと、丸山雅秋さん、ハインリヒ・トマス・ロニーさん。コーディネーターは松本猛塾長が務めました。
セッションでは主に仕事面、教育面、原発問題に対する日独の考え方の違い、豊かさに対する認識の違いについて話題になりました。
各パネリストからの発言を要約します。
(記録:富取)
ドイツ人及びヨーロッパ人の価値観が日本人といかに違うか、民主主義とか個人主義が徹底している国と対極にあるのが日本であることを改めて感じさせられた。
多くの日本人が日本の伝統や常識だけを知っていて、他国のものの考え方に関心がないし、知らない。だからこういう講座を聞くのは良い事だと思う。(松本市・70代・女性)
人間として生まれてきて、その本来のあり方、生き方を、日本とドイツを通して自分なりに考えてみることができました。
原発については、不便であることが豊かさでもあると考えられる思考形態が素晴らしいと思います。政治についても、教育のひずみなのか、日本は討論の土壌ができていない。国民も他人事のようで討論しようとしない、本当に淋しい国だと思います。日本人は本当に豊かに生きているのだろうかと改めて考えさせられました。(松本市・60代・女性)
ドイツ人は芸術や趣味を大切にし、自分のものにしているということが印象的でした。豊かさの違いも知り、日本でも、もっと長期休暇や自分たちの暮らしを大切にする習慣が社会的に認められたらいいなと思いました。
実際にドイツを見た人の話はリアリティがあって、聞いていてとても面白かったです。同時に、自分自身でもドイツに行って、実際に見聞きしたいなと思いました。また、ロニーさんがいたことで、日本のいいところも改めて知らされ、日本のことももっと知りたいと思いました。(松本市・20代・女性)